最新データの概要
7月売上が今年最高を記録——前年比18.8%増
韓国のロッテツアー・デベロップメントが韓国取引所(Korea Exchange)に届け出た2026年7月の開示資料によると、同社が済州ドリームタワー・リゾートで運営する外国人専用カジノの月次売上高は515億9,000万ウォン(約3,606万米ドル、約55億3,000万円)に達し、2026年の月次ベストを更新した。前年同月比では18.8%増、前月比では5.8%増となった。
ゲーム種別の内訳——テーブルとマシンが揃って拡大
テーブルゲームの売上高は約489億1,000万ウォンで、前月比3.6%増・前年同月比17.7%増。テーブルゲームのホールドレート(客が購入したチップに対するカジノの取り込み率)は22.6%で、前月から1.6ポイント上昇し、前年同月からは5.3ポイント改善した。
マシンゲームの売上高は約26億9,000万ウォンで、前月比76.8%増・前年同月比44.1%増と大幅に伸長した。マシンのホールドレートも7月は5.7%となり、6月の3.7%・前年同月の5.5%をともに上回った。
来館者数と累計——2021年の開業以来最高水準に近づく
7月のカジノ来館者数は6万2,706人。前月比2.6%増・前年同月比10.6%増だった。ただし月次としての過去最高は5月に記録した6万3,192人で、これは2021年6月の開業以来最多となる数字だ。7月の来館者数は開業以来2番目の高さとなっている。
2026年1〜7月の累計カジノ売上高は約3,173億4,000万ウォンで、前年同期比33.3%増と大きく拡大している。同期間のホテル売上高は約497億1,000万ウォンで、前年同期比13.4%増だった。
チップ購入額(ドロップ)は前年比で減少——矛盾するデータが示すもの
一方で、テーブルゲームのカジノドロップ(チップ購入総額)は7月に約2,167億6,000万ウォンで、前年同月比9.9%減・前月比3.5%減だった。1〜7月の累計ドロップは約1兆4,300億ウォンで、前年同期比13.1%増となっている。
ドロップ(チップ購入額)が前年比で減少しながらも売上(ホールド金額)が大幅増となった点は一見矛盾に見えるが、これはホールドレートが前年同月比で大幅改善(+5.3ポイント)したことで説明できる。来館者が少なくベットしてもカジノ側の取り込み率が高ければ売上は伸びる。この現象は確率的な変動の影響が大きく、持続的なトレンドとして評価するには複数月の観察が必要だ。
済州ドリームタワーとは——韓国で最大規模の外国人専用カジノ
済州ドリームタワーは韓国・済州島に2020年に開業した高さ169メートル、38階建ての複合リゾート施設だ。ロッテツアー・デベロップメントが開発・運営し、カジノ部門は2021年6月に外国人専用施設として営業を開始した。韓国国内では原則として韓国籍市民のカジノ利用が禁止されており、済州ドリームタワーを含む多くの施設は外国人のみを対象とした「外국인전용카지노(外国人専用カジノ)」として営業している。
同施設は済州島という立地の特性を最大限に活かした観光集客を軸に設計されており、テーブルゲームを中心とする高単価客層の誘致と、上海・香港・北京・東京などアジア各都市からの航空アクセスの向上によって着実に来客数を伸ばしてきた。
カジノ総研の見解
済州ドリームタワーの成長が示す「アジア内カジノ競争」の現在地
今回の数字が示す最も重要な事実は、済州ドリームタワーが単なる「韓国の地方リゾート」ではなく、アジア太平洋地域における外国人向け高級カジノ市場の競争プレイヤーとして確立しつつあるという点だ。
前年同月比18.8%増という売上成長率は、マカオ・シンガポールの主要施設が「回復期」から「安定成熟期」に移行しつつある中で際立って高い。これは①済州島への国際線直行便の増便・新規就航による到達性の改善、②韓国ウォン安傾向による訪韓外国人にとっての割安感、③バカラを中心とするアジア系ハイローラーの取り込み強化、という複数の要因が重なった結果とカジノ総研は見ている。
マシンゲームの急成長——構造的シフトの予兆か
前月比76.8%増・前年同月比44.1%増というマシンゲームの伸びは、テーブルゲームの伸びを大幅に上回っている。金額の絶対水準はテーブルに比べて小さいが、この傾向が持続するなら注目すべきトレンドだ。
従来、アジアのカジノ市場ではテーブルゲーム(とりわけバカラ)が収益の大半を占める傾向が強く、マシンゲームは補助的な役割に留まることが多かった。しかし若年層や女性プレイヤーを中心とした来館者層の多様化が進む中で、少額・短時間・低心理的ハードルで楽しめるマシンゲームへの需要が拡大する可能性がある。済州ドリームタワーのマシン売上拡大は、この潮流の初期シグナルとして位置づけることができるかもしれない。
ドロップ減少とホールドレート上昇——持続可能性の問い
前述の通り、7月は「ドロップ(チップ購入額)が前年比減少したにもかかわらず売上が大幅増」という構図だった。この主因はホールドレートの上昇だ。
ホールドレートは理論的にはゲームのルール上の数値(ハウスエッジ)に長期的に収束するが、短期間では確率変動の影響を大きく受ける。ハイローラーが多い月には少数の大口負けがホールドレートを押し上げる傾向があり、逆にハイローラーが「勝ち逃げ」した月はホールドレートが下がる。
カジノ総研として率直に言えば、今月の高いホールドレートは「施設の実力」を示すものではなく、確率的に有利な月だったことを示している可能性が高い。投資家・アナリストが中長期のトレンドを評価する際は、ドロップ(市場規模)の動向をより重視すべきだ。
日本のIR開発への示唆——近隣競合としての済州の台頭
日本では大阪IRをはじめとするカジノ統合リゾートの整備が進んでいるが、済州ドリームタワーの成長軌道は日本にとって他人事ではない。
済州島は九州・関西・東海からの飛行距離が2〜3時間圏内に位置し、日本からの訪問者にとっても現実的な選択肢だ。日本のIRが2030年代に開業するまでの期間、済州ドリームタワーをはじめとする韓国・フィリピン・シンガポールのカジノ施設は、潜在的な日本人プレイヤー(合法的にカジノを楽しめる国・地域の居住者)を取り込む競合として成長を続ける可能性がある。
日本のIR整備にあたっては、済州ドリームタワーのような近隣アジア施設の競争力を正確にベンチマークし、差別化戦略を明確にすることが不可欠だ。
まとめ
済州ドリームタワーの2026年7月データは、単月の業績報告を超えた複数のメッセージを持っている。外国人カジノ市場としての韓国・済州の成長継続、マシンゲーム需要の拡大という構造的変化の予兆、そして短期的なホールドレート変動に惑わされない中長期視点の重要性だ。
カジノ総研は韓国・フィリピン・シンガポール・マカオなどアジア各国のカジノ市場の動向を継続的に追跡し、日本のIR開発の文脈で分析・発信していく。
本記事の元情報はGGRAsia(2026年8月3日付)およびロッテツアー・デベロップメントの韓国取引所開示資料に基づいています。カジノ総研編集部が独自の分析と見解を加えて制作しました。掲載しているデータは報道時点のものです。
執筆者について
佐藤 誠
佐藤 誠は、世界および日本のカジノ産業、統合型リゾート(IR)、ゲーミングテクノロジー、規制動向に関する調査・分析を専門とするリサーチャーです。カジノ市場の成長性、各国の法規制、プレイヤー動向、業界ニュースを客観的なデータに基づいて分かりやすく解説し、初心者から業界関係者まで信頼できる情報を提供しています。
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